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個人向け国債は買ってはいけない

2.なぜ個人向け国債は買ってはいけないのか?

個人向け国債は定期預金よりも金利が高く、国の元本保証付きで途中解約のペナルティーもありません。しかも日本全国のほとんどの金融機関で買えるので、銀行の定期預金にお金を預けるよりは、個人向け国債で運用をすべきだと考えることは自然なことです。しかし私は、個人向け国債の購入はおすすめいたしません。以下にその理由を挙げましょう。尚ここから先は話をシンプルにするために、変動10年債を購入するという前提で進めます。

2.1表面利率が低すぎて、投資商品としては魅力が薄い

まずは、個人向け国債の現在の表面利率が低すぎるという理由です。現在売り出されている変動タイプの表面利率は0.09%。これは2021年3月現在において、メガバンクの定期預金の45倍という金利です。では実際に購入したらどのくらいの利息がもらえるのでしょうか?

今あなたの手元に運用資金が1,000万円あるとします。これをすべて個人向け国債の変動10年型で運用してみましょう。金利は将来どうなるかわかりませんが、とりあえずそのまま据え置きとします。
さて、1年後に受け取れる利息ですが、9,000円です。しかもこの9,000円には税金がかかり、税引き後の手取り利益は7,170円まで下がってしまいます。いかがでしょうか?これを1,000万円の運用益としてもらって喜ぶ人が、世の中にどのくらいいるのでしょうか。いくら国債の金利が銀行の定期預金より優遇されていると言っても、実際はこんなものなのです。
更に、個人向け国債は最初の1年間は原則換金できません。後述するハイパーインフレが1年以内に起こってしまった場合には、お金の価値がどんどん下がっていくのを、指をくわえて見ているしかありません。ちなみに、インフレが起こった際には個人向け国債の金利も見直されますが、見直しは半年に一度です。インフレスピードが急速な場合には、見直しのタイミングがそのスピードについていけない仕組みは、致命的だと言えます。

2.2 個人向け国債は単利の金融商品

「リスクは全く取りたくないが、少しでも有利な運用先を選びたい」というのであれば、個人向け国債は優秀な商品です。それでもこの商品が決定的に魅力に欠けると思うのは、これが単利での運用商品という点です。資産運用の基本は複利運用。資産を増やすにあたり、これに勝るものはありません。
一方、積み立てで投資信託を買う場合などは、基本的に運用は複利になります。元本に利息が組み入れられてより膨らんだ元本に対して、更に利息が付いていく。もちろん投資信託は値動きがありますが、リスクを取らなければリターンもないのが投資です。

2.3 今後利率が大きく上がる可能性は限りなく低い

先ほどのシミュレーションでは、個人向け国債の金利を0.09%で計算しましたが、これは変動10年型で運用したケースです。この先景気が良くなれば、金利もどんどん上がっていくはずです。しかし現実的にそれが実現することは、極めて難しいと私は考えています。
個人向け国債の金利の基になるものは、金融市場で取引きされる長期国債の金利なのですが、現在それは日銀の異次元の規制緩和により、意図的にかなり下げられています。そして政府が発行した金利が低い国債を大量に買い取っているのは日銀です。2021年現在、日銀は政府発行の長期国債の約50%を保有しています。もしここで景気が良くなり、日銀が国債の金利を上げ始めたら一体どうなるのでしょうか?
金利が上がると、債券の価格は下がります。日銀が長期金利を上げれば、自らが保有する国債の価格が下がるということです。要するに、日銀が長期金利を上げれば上げるほど、自らが保有する国債の価格が下がり、日銀の資産の評価損が膨らんでいくということになります。自分の首をしめるような政策を、日銀は行うことができるのでしょうか?このように考えれば、日銀は長期金利をこれからもずっと低いままで抑え込もうとするのではないでしょうか。

〈ご参考〉
金利と債券価格の関係を誰よりもわかりやすく解説する
第135回事業年度(令和元年度)決算等について(日本銀行)

2.4膨らみすぎた政府の負債の先送りが、将来の金融危機につながる

私は現在の日本の行き過ぎた日銀の金融緩和や政府の金融政策には、潜在的な大きなリスクがあると思っています。それは、金融緩和の後の出口がどこにもないからです。
そもそも国の収入が税収だけで完全に賄われていれば、国債をわざわざ発行する必要すらありません。しかし日本の国債の発行額は、毎年増加を続けています。税収に対して支出が多すぎるので、国債を発行して借金をし、その穴埋めをするしか方法がないのです。
ちなみに、国債(債権)は期限があり、満期を迎えると償還されます。借りたお金は返さなければなりません。しかし現実には、日本政府にはその借金を返すお金もないのです。そこで、満期を迎えた国債をそのまま借り換えることによって、この困難を乗り切っています。
要するに政府の借金は全く減らずに返済期間を引き延ばしながら、新たな借金を毎年積み重ねている、これが現実です。ではこのお金を一体誰が返すのかというと、将来の世代が税金や社会保障の縮小によって負担することになります。しかし、将来ちょっとやそっと税率を上げたくらいでは、この借金は返すことができないほど膨らんでしまっています。
ところで、日本政府の借金は約1,100兆円。毎年の税収は60兆円程ですが、これでは全く足りないので、平均すると毎年30-40兆円の国債を発行して財政を賄っています。この膨れ上がってしまった借金を返す方法の一つは、毎年の国家予算予算を50兆円と今の半分以下にして、税収との差額を10兆円ほど捻出し、コツコツ返済にまわすことぐらいでしょうか。しかし仮にこんなことができたとしても、毎年10兆円の返済では、完済までに約110年間もかかる計算になります。そもそも税収はキープしながら国家予算を現在の半分にするような事など、できると思いますか?
この問題の一番現実的な解決方法があるとすれば、それはハイパーインフレを起こしてお金の価値を下げ、借金を帳消しにすることだと思います。これを過激すぎる思想だと批判する人もいるのですが、私はこのシナリオは十分に起こり得ると思っています。言葉を変えれば、日本の財政問題はこの方法でしか解決ができないと思っています。
少し大げさかもしれませんが、個人向け国債を買うということは、日本政府の膨らみ続ける借金を許容し、この政策に加担していることにもなるわけです。そして、万一ハイパーインフレにでもなったら、円や国債は価値を失い、紙くず同然となってしまうのです。これが私が個人向け国債をおすすめしない最大の理由です。

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