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個人向け国債は買ってはいけない

超低金利の環境が続く中、個人向け国債の人気が再燃しているらしい。預貯金に比べて高い金利がもらえるほか、中途換金しやすく元本割れしないことなどがその主な理由だ。ボーナスシーズンなどに合わせ証券各社が購入時に現金やポイントを付与するキャンペーンを実施していることもあり、発行額は増加傾向にある。

個人向け国債とは?

「個人向け国債」は、個人の保有を促進するために2003年に発行された。半年ごとに利子が支払われ、満期になると元本が戻ってくる仕組みだ。主に機関投資家が市場で売買する国債が売却時に損益が発生するのに対し、個人向け国債は途中で換金しても元本がそのまま返ってくる。

固定金利の3年債と5年債、変動金利の10年債の3種類があり、いずれも毎月発行されているから、いつでも買うことができる。ちなみに購入単位は最低1万円から1万円単位。1年以上経過すると満期の前にも換金できるが、手数料として直前2回分の利子は差し引かれる。

表面利率が低すぎて、投資商品としては魅力が薄い

この商品、定期預金よりも金利が高く、国の元本保証付きで途中解約のペナルティーもない。しかもほとんどの金融機関で買えるので、超低リスクな金融商品には違いがないのだが、俺は購入をおすすめしない。

なぜか?

第一に、今の「表面利率が低すぎる」から。確かに銀行の定期預金よりは若干高い金利だが、現在の個人向け国債の利率は0.05%/年だ。100万円運用して、1年後に利息500円。これを運用益としてもらって喜ぶ人がどのくらいいるのだろうか?しかもこの500円には税金がかかり、税引き後の手取り利益は398円。

この0.05%という利率は、個人向け国債で定められた下限の金利なので、これよりも下がることはないけど、1,000万円運用しても1年後たったの3,980円しか利息として受け取れないのは、どう甘く見ても魅力的な金融商品とは言い難い。

もちろん変動10年タイプの場合は、将来金利が上がれば、それに連動して国債の金利も上がっていく。
しかし、日銀の金融政策では、当面彼マイナス金利をやめる気はないというのが現状だ。なぜなら仮に日銀が国債の金利を上げ始めると、その分の利払いで日銀に評価損が出てしまうから。

日銀の2019年の長期債の保有は473兆円で、平均利回りはわずか0.257%。これ以上金利が上昇すれば、現在日銀が保有している国債の価格は下がり、評価損が出てしまうのだから、実質的に日銀がこれ以上金利を上げることが難しいのだ。だから国債の金利は、しばらくこのまま据え置きされるしかないと思う。

ご参考
金利と債券価格の関係を誰よりもわかりやすく解説する
第135回事業年度(令和元年度)決算等について

膨らみすぎた負債の先送りが、将来の金融危機につながる

二つ目の理由は、日本国債というシステムそのものに潜在的なリスクがあると考えるから。債券とは、発行体が投資家からお金を借りるための借用証書のこと。国債は国が発行する借用証書だから、個人向け国債は国が個人から借金をする借用証書のことを指す。では国が個人から借金したお金は、いったいどのように使われているのだろうか?

そもそも国の収入が税収で完全に賄われていれば、国債をわざわざ発行する必要すらないのに、国債を発行しなければならないということは、日本の財政が赤字だからだ。その赤字を穴埋めするために今借金をしてやりくりしているわけだけれど、これは将来返すお金を増やしているということになる。これは言い換えれば、将来の世代に重い税負担を強いているということ。

日本の財政赤字は今に始まったことではないのに、国債の発行残高は毎年増え続けている。国債発行残高は今や約1105兆円、対GDP比率でなんと230%超えだ。これは世界からみてもダントツトップの悪い数字だ。この借金が毎年増え続けているのに、これ以上国債の発行額(政府の借金額)を増やして大丈夫なんですか?という話なのだ。

ちなみに、我が国の2019年の税収は63.5兆円。対する2020年度の国家予算は102.6兆円。日本政府の借金は毎年雪だるま式に増え続けていて、これはいつか国民が返さなければいけない借金として積み上がっていっている。

更にコロナ禍による国民一人一律10万円の給付だけでも12兆円の追加だ。これらの保障を含む補正予算の合計は57.6兆円。1年間の国の税収と同じ規模の支出が、コロナ対策だけで行われるのだから、いかに急速に負債が増えているのかよく分かるはずだ。

「10万円をもらえてラッキー!」などと言っている場合ではない。これは俺たちが政府から前借りしているだけで、いずれ税金で回収されることになる。このように、日本の国債の発行額はものすごい勢いで積み上がっている。これがやがて日本で大問題となり、金融危機に発展してしまうと思うのだ。

*ご参考
2次補正予算が成立 20年度の歳出、160兆円超に (2020年6月12日日本経済新聞)

結論は株式への長期分散積み立て投資

ちなみに、私たちが普段に使っている銀行預金や保険も、その大部分は国債で運用されている。預金も間接的に国債を買っているのと同じこと。だからあえて言いたい。「預金は悪」だと。
では資産運用はどうすればいいかというと、現役ビジネスマンなら「長期分散積み立て投資」一択だと思う。

ただし、リタイアした世代の方にとっては元本が保証されている預金や国債が良い運用になる場合もある。リスクを取り過ぎて資産がマイナスになってしまったら元も子もないのだから、定期的な収入がない場合に限り、リスクの低い預貯金で運用するのは理にかなっている。いずれにせよ、国債で将来の利上げによるインカムを期待するのはやめて、これはあくまでも「定期預金よりちょっとマシ」くらいの感覚でいた方が良い。

なぜ個人向け国債はキャンペーンで売られるのか?

ここまで理解した上で、あえて個人向け国債を購入する場合、最後にもう一つ注意をしていただきたいこと。それは個人向け国債が、他の手数料の高い金融商品のフロントとして扱われているという現状だ。

個人向け国債は銀行などの窓口でキャンペーンとして売られることが多い。特にボーナスシーズンなどに合わせ証券各社が購入時に現金やポイントを付与するキャンペーンを実施していることが多くある。しかし、なぜこのような銀行側にとって手数料が薄い商品を、彼らはわざわざキャンペーンで売るのだろうか?

個人向け国債は1年以上保有すると、元本割れをしないで解約できる。そこに目を付けた金融機関が、まずはその安全性を理由に個人向け国債を無知な投資家に売り、1年後に解約できるタイミングで、顧客に電話をする。
「あなたの保有する国債が換金できるようになりました。つきましては…」などと持ちかけ、別の手数料の高い料金に乗り換えさせるセールスをすることが多い。

顧客はキャンペーンにつられその金融機関で元本保証の国債を買い、金融機関は顧客の資産を把握した後に、他の商品に乗り換えさせるセールスを行い、後で手数料をがっつり取るというわけだ。これを読んでいる皆さんは、決して金融機関の「カモ」になってはいけない。

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