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【最終回】サラリーマンが築古木造を購入すると節税できるのか?(9)

「こういう状況ですので、どうかガス会社の変更にご協力をいただけないでしょうか?」

俺は今までの経緯を MS 者の管理担当に説明し、このディールが俺にとっていかに大きなメリットをもたらすかということを力説した。しかし先方から帰ってきた答えは、案の定俺の希望とは正反対のものだった。

「お気持ちはわかりますが、弊社と現在のガス会社も連携しており、この物件のバリューアップのために今まで頑張ってきました。もちろん今後もこのガス会社としっかりとパートナーシップを組んで、物件を管理していきます。ここでガス会社を変えられてしまうと、私どもの信頼関係にもひびが入りますし、新しいガス会社さんとうまく協力できるような体制は現在できておりません。申し訳ありませんが、この話はお受けできかねます。」

MS社の担当は、そう言ってはっきりと断ってきた。

「オーナーの利益を最優先」と言っている管理会社の考えは、この程度のものなのか。どう考えてもオーナーの俺にメリットがある話なのに、結局は自分たちが組んでいるガス会社から受け取っている既得利益を失いたくないし、俺にはバカ高い管理手数料を請求していても、手続き関係などの面倒に自分たちが巻き込まれるのは嫌なのだ。

これまでのMS社のやり方に対し、不信感をMAX積もらせていた俺だが、これで気持ちの整理がついた。もうMS社とはこれ以上は組めない。

それから俺は信頼できる大家仲間に相談し、地元で有名な管理会社をいくつか紹介してもらった。そしてすぐにそれらの会社とアポを取り、管理会社を変更しようとしている旨を伝え、それぞれと具体的な金額やサービスの詳細を詰めていった。

そんな中、ある会社からかなり前向きな提案を受けた。良心的な管理費で、こちらでできる清掃などは差し引いて請求をしてくれる。リフォーム代も格安で、非常にクオリティーが高いことがわかった。また、新しく提案を受けたガス会社ともすでに付き合いがあり、俺の所に来た営業担当者とも面識があった。これならばすぐにでも連携が可能だろう。

何より心強かったのは、「ガス会社からのサービス提供をうまく使いながら、できるだけ月々のキャッシュフローを積み増し、不動産の相場が回復するまで一緒に頑張りましょう!」と言ってくれたことだ。

「紺野さんがMS社から購入した価格は、はっきり言って高すぎます。しかし幸い、こちらは土地値が出る物件なので、ある程度長期で保有すればなんとかリカバリーをしてプラスで売り抜けられる可能性があります」

管理会社を変更すると伝えた後には、MS社側から嫌みも言われたし、彼らの引き継ぎに対する態度も協力的とは言えなかった。管理委託の中途解約ペナルティーとして、契約通り数十万円の請求もされ、本当に悔しい思いを何度もしたけれど、あの時あそこで大きな決断することができたから、今やっとこの投資がら少しずつ利益が出る所まで回復させることができた。

管理会社を変更してからは、清掃や手入れのため、自分のアパートに足繁く通うようになり、以前より物件に対して愛着もわいた。100本ほどあった庭の樹木は、シルバー人材センターに頼み格安で伐採してもらい、害虫や落ち葉の処理問題を解決させた。昨年の夏は、あの歴史的炎天下の中、除草剤を散布し何日もかけて100坪の土地から雑草を駆除した。そして昨年末には、そこに防草シートと砂利を敷き詰め、雑草の呪縛から解放されるとともに、物件の外観も格段に向上させた。同時に共用部の蛍光灯をLEDに代え、新しく消防設備点検の業者を見つけ、すべてを自分でコントロールしながら、固定費を大幅に削減させることに成功した。あのままMS社に管理を任せていたら、これらのすべては叶わず、高い手数料を取られ続けながら、ますます身動きがとれない状況になっていたはずだ。

そして今は、10年後にこの物件がプラスで売却できればいいなぁというくらいのゆるい希望を持ちながら、その時が来るのを静かに待っている。今の俺なら絶対に手を出さない物件だが、買ってしまった以上自分ができる最大の努力をし、あとは運を天に委ねるしかない。未来がどうなるかなんて、その時になってみないと誰もわからないのだ。

購入前後は気が休まらなくストレスフルな日々を過ごしたが、いろいろな人に助けられてここまで来れた。その中の何人かは、今これを読んでいるはずだ。
みんな、ありがとう。

そして最後に一番伝えたいこと。

普通のサラリーマンが節税目的で築古の木造物件を買ってはいけない。
この節税スキームを使っていいのは、最低でも所得税率が40%以上(課税所得1,800万以上)で、建物の減価償却がとれる最低4年間、このレベルの収入が確約されている事業主か法人だけだ。キャッシュで買えれば最高だが、借り入れする場合銀行の金利にも注意が必要だ。この条件以外の人が中途半端でトライしても、物件の売却時に、譲渡税でがっつりと課税され、リスクに対して見合うだけのメリットはない。結局は販売会社や管理会社に利益をむしり取られて終わりだ。

そして世間で脚光を浴びている不動産会社も、企業利益のためには顧客にメリットがない提案をバンバンしてくることもあるという事実。「何を買うかではなく誰から買うかが大事」だと思っていたが、その「誰か」がどこを向いて仕事をしているのかも、しっかりと見極めることが大切だ。
こんな時、数字を使ってしっかりとしたセカンドオピニオンを出してくれる不動産投資のアドバイザーがいると、購入前に相談ができるはずだ。販売業者は感情をゆさぶって購入を焦らせてくるかもしれないが、その前にできるだけきちんと精査した方が良い。俺もいろいろ経験してやっと一通りのアドバイスができる立場になったから、声がかかれば積極的に相談に乗ろうと思っている。

今売買に出されている収益物件は星の数ほどある。その中のどれも「良い」も「悪い」もない。自分の投資基準から見て「高い」か「安い」か、ただそれだけだ。
ある人にとっては「良い」物件も自分には「悪い」ことだってある。立地、市場動向、需給、税法、外交問題、そしてその地域の都市開発や災害リスク。
不動産の価値は、これらのすべにダイレクトに左右されるが、全部を予測するのは不可能だ。その中で自分で決断し、ベストを尽くす覚悟を決め、結果を引き受ける責任があれば、不動産ほど投資として魅力的なものはないのもまた事実だ。

スルガ銀行の不正融資やかぼちゃの馬車問題は、俺にとって他人事ではない。自己責任として被害者を断罪する人は、多分不動産投資を経験したことがない輩たちだ。勇気を持って行動し、被害にあった大家たちには、心からエールを送りたい。そしてここからがんばってリカバリーしてこの経験を今後の人生に生かしてほしいと心から願っている。

俺の人生は不動産事業を通して確実にプラスの方向に進んだ。成功も失敗も、希望も絶望も、嫉妬も優しさも全て味わうことができた。その中でいろんな出会いや別れを経験し、俺は確実に前よりも強くなった。

「俺の不動産!物語」は、これ以上ネタがないので今回で一通り終了だ。

今後は不動産以外のことについても書いていきたい。
読んでくれてありがとう。

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