BLOG

サラリーマンが築古木造を購入すると節税できるのか?(6)

事は順調に進んでいった。
売買契約を終え、いよいよ金消契約が目前に迫ってきていたある日、俺は再度MS社を訪れた。

今回の目的は、再びA氏と会い、自分の持っている疑問を解消することだ。
実は売買契約を結んだ後、ひどい不安に襲われ、連日のように睡眠不足に陥ってしまっていたのだ。
かつてはこれ以上の金額を大阪の物件に突っ込んだこともある。それでもここまで大きな不安を感じることはなかった。
しかし今回は、気がつくと最悪のシナリオばかりが頭の中を駆け巡る。

すべてがシミュレーションどおりに進むなら問題はない。しかし本当にそんなに上手く行くのだろうか?
俺のコントロールできない要因が働き、この投資シナリオを狂わせることだって十分にありえるのだ。

例えば仕事をリストラされてしまったら?
地域の条例が変更になり、民泊を撤退することになったら?

いずれかの状況になれば、そもそも収入が激減するのだから、支払う税金も連動して減るだろう。
それなのにこれらの税金を還付させるという目的で、あえてこの木造を購入するのはリスクではないのか?
買うならせいぜい数千万の投資にしておくべきではないのか?いきなり2億超えの5棟まとめてだなんて、リスクの取り過ぎではないだろうか?

建物の減価償却を使った節税で還付される数百万円と、利回りの良い築浅物件から得られるキャッシュフローの数百万円。
同じ金額でも、売却時の物件の評価額や、支払う譲渡税の扱い方などを考えれば、どう考えたって後者の方がいいに決まっていた。
でも、俺は気づいたらもう後戻りのできないところまで来てしまっていた。
安心した気持ちで金消契約の日を迎えるためには、このミーティングでMS社から安心のいく回答をもらうことが必要不可欠だったのだ。

A氏は俺の疑問に一つ一つ答えてくれた。だいたいのやりとりはこんな感じだ。

Q.仮に私が会社をリストラされたら、収入が減り節税どころではありません。この場合、この物件の購入はリスクではないでしょうか?
A.確かに収入はなくなります。しかし、仕事の有無にかかわらず、翌年には前年度分の所得に応じた多額の税金を納める必要があります。この物件を購入して減価償却で赤字にしておけば、翌年の税金の心配は必要ないし、ゆっくり仕事を探せます。

Q.減価償却の額を大きくすれば、償却期間後に物件を売却する時に譲渡税の額も大きくなり、税金で還付された分が全部吹っ飛んでしまいます。これでは投資としてうまくいかないのではないでしょうか?
A.減価償却で赤字にして還付されたお金を、次の物件の購入資金にします。この方法を繰り返すと、自己資金を一切追加投資せずに、物件の数を増やしていくことができます。いずれ税金は払わなくてはいけませんが、それを先取りし次の投資に回せば、資産はどんどん膨らんでいくのです。金の卵を買うのではなく金の卵を産むガチョウを購入すると思ってください。不安になるお気持ちはわかりますが、この方法で今まで何人ものお客様の資産を築いてきたので、間違いはありません。

わかったような、わからないような落ち着かない感じだった。
俺の脳みそが少なくて理解できないのか、A氏の説明の方がおかしいのか、それともA氏は本気でそう思っているのか、俺にはわからなかった。
同じようなやりとりを何度繰り返したかわからない。一貫して俺は疑問を投げ続け、A氏は自信満々に答えるという状況が続いた。

長い長いやりとりを終わらせることになったのは、A氏の次の言葉だった。

「譲渡税のことばかり気にされていますが、この物件の売却と同じ年に他の物件を購入することにより、売却益を薄めて、譲渡税を押さえることができます。」

マジか?それを早く言ってくれよ!

後で税理士さんに相談して理解したことだが、この説明は完全に間違っていた。
でもその時の俺の知識では、その言葉が間違いだと気づくことができなかった。
あんなに不動産の本も読み、一度物件の売却も経験していて知識としては頭に入っていたはずなのに、なぜその時に気付かなかったのかは今でもわからない。

そうして金消が終わり、ついにこの5棟は俺のものになった。
同時に俺は、個人で2億3千万円という莫大な借金を背負うことにもなったのだ。

SHARE

TOP OF PAGE