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エアビーは投資ではなく経営だ

エアビーは不動産投資に比べると、スタート時のハードルは低い。
不動産投資に興味はあるが、大きな一歩を踏み出せない場合、マンションの区分所有や築古の戸建ての購入からスタートするのもいいが、エアビーも選択肢の一つになる。
初期投資で必要なのは物件の賃貸契約と家具、家電、電気、ガス、水道、ネットなどのインフラの契約費くらいだ。リスクも予測しやすく、例えば不動産投資で○億円のマンションを1棟購入するよりば限定的だ。
最低限学生の一人暮らしをスタートさせるのと同程度の準備をすれば、とりあえずゲストの募集はスタートできる。

しかし参入障壁が低いからと言って、何も考えずにエアビーをスタートさせてしまうことは、レッドオーシャンの中にパンツを脱いで飛び込むようなものだ。
そんな事をしたら、毎日丁寧にお手入れして大切に育ててきた俺の純子ちゃんが、あっという間に凶暴な鮫に喰いちぎられてしまう。

念のため説明しておくと、純子というのは俺の息子の・・・いや、もはや説明不要だろう。

だから周りが「儲かる」と騒いでいるからといって、安易ににエアビーを始めてはいけない。
エアビーをやる場所、近隣の競合調査、代行業者の選定、初期費用の見積もり、差別化の設定、そして誰と組むのか?
これらを総合的に考慮し、緻密なシミュレーションを繰り返し、様々なリーガルリスクも考慮した上で、それでもイケると判断した時に、自分の責任でスタートさせることが大切だ。

俺がエアビーを始めるにあたり、一番こだわった条件は立地だった。
部屋の内装やリスティングは後から変更が可能だが、立地だけは動かせない。
海外のゲストが東京への旅行を決め部屋を検索する時に、ヒットしやすいエリアに物件を持たないと、後々苦労する羽目になると考えた。
都心というだけではダメなのだ。一体何人の外国人が「Jinbocho」(神保町)という名前で部屋を検索するというのだろうか?
都心のど真ん中より有名な観光エリア。例えば「Shinjuku」「Shibuya」「Harajuku」「Asakusa」「Roppongi」あたりは検索数が多そうだ。
次点で「Akihabara」「Ikebukuro」「Shinagawa」あたりか?
「Ebisu」「Meguro」「Kichijoji」。毎年住みたい街ランキングで上位に入る街だけど、外国人がこれらの街の名前と地理感覚を正確に把握しているとは到底思えなかった。

それにハイソな住宅地にポツリとエアビー物件があっても、でかいスーツケースを引っ張って歩く旅行者の団体は嫌でも人目につくだろう。
ゲストだって外に出る度に周りから好奇な目で見られるのは、マジ勘弁してほしいところだと思う。
だから現時点で都内でAirBをやるなら、住宅地より断然観光地にすべきだ。これが俺の出した仮説だった。

もう一つこだわった事。それは、この新宿の部屋の運営は、できるだけ代行業者を使わずに信頼できる仲間と組んで行う事だった。
この部屋の内装やハウスマニュアルは、俺がその技術もセンスも心から信頼しているプロのデザイナーに発注した。
限られた予算の中でシンプルだけど計算尽くされたデザインが生まれ、2次元の図面のイメージが実際の部屋の中に再現された時、俺は久しぶりに「感動」というものを味わった。
部屋の写真は、そのデザイナーがプロのカメラマンと組んで、見映えの良い写真を何枚も用意してくれた。
リスティングの写真の並びや説明文は、英語と日本語の両方を準備し、試行錯誤しながら何度も順番を並べ替え、文章を推敲していくうちに、少しずつ洗練されたものが出来上がった。
そして肝心のゲストとのやり取りは、全部俺が責任をもってやることにした。
会社のメールはほぼ100%英語だから、ちょっとしたエアビーの予約や質問のやり取りを英語で行うのは、俺にとっては朝飯前なのだ。

これらをすべて代行業者に丸投げすることもできるが、そのためには当然安くはない手数料という名の費用を支払わなければならない。
金の問題だけではない。ゲストとの細かいやり取りを、大量に物件を管理している業者がタイムリーにできるのだろうか?
リスティングの写真を、代行業者がきちんと吟味して効果的に並べ替えてくれるだろうか?
ゲストの旅行の前日に、一言「Have a safe trip!」と一言メールする余裕。これは個人で運営しているからこそできる、ちょっとしたおもてなしのごく一例だ。

遠隔地にある物件を管理してもらうのであれば仕方ないが、俺は手間はかかっても自分でできることは全部自分の納得いくようにやりたかった。
自分の工夫でリスティングの順位を上げる努力をし、ゲストの問い合わせに対してきめ細かい柔軟な対応を心がけ、反省点を生かして次につなげてゆく。
結果としてそれが良いレビューの獲得につながり、小手先のテクニックに頼らずも人気の部屋になるのは時間の問題だろう。将来エアビーの規模を拡張していくフェーズが来ても、これら一連の作業は必ず経験として役に立つはずだ。

そして2016年1月の終わり。大家から部屋を引き渡してもらったその日に、俺たちはほどんどの家具のセットアップを完了させ、リスティングを公開した。それと同時に、ひっきりなしに予約が入りだした。
そして2月の終盤。俺はすでに5組のゲストを迎え入れ、今は次に迎え入れるゲストとのやり取りを楽しんでいるところだ。

エアビーをただの投資の一つとして考え、資金を出した後に代行業者に丸投げしても、うまくいかない責任は自分でとるしかない。
競合が多ければ多いほど、ゲストの立場になって考えられた部屋作りと、自分のポリシーに従って運営することが大事になってくる。そしてこれは、経営そのものなのだ。

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