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パラレルキャリアの始め方 ~副業ではなく複業で稼ぐ~

戦後長らく日本企業に浸透していた「年功序列」システムが崩壊し、私たちは新しい価値観に基づいた働き方をする必要に迫られている。待ち受けるのは、同一労働同一賃金に代表される完全実力主義の社会。雇用形態が柔軟になる一方、個人の持つビジネススキルや、そのベースになるコミュニケーション力が付加価値を生み出すことになる。
この新しい社会にどう適応していくのか?そして自分のビジネススキルを高めながら、いかに早く老後も安心して暮らせるための仕組みを形成するのか?企業で働く私たちは、他社でも通用するスキルを磨きながら、複数のキャリアを同時に展開しつつ、人生の選択肢の幅を広げておくことが必要だ。

年功序列システムの崩壊

●同一労働同一賃金の導入がスタート

「好業績でも正社員リストラ 同一労働同一賃金の衝撃」
これは、2020年1月に日経新聞で目に留まった記事の見出しだ。同一労働同一賃金とは、「同じ仕事をしているなら、雇用形態にかかわらず、同じ賃金にするべきである」という2020年4月に始まる国の定める新しいガイドラインだ。
長らく問題になっていた正規雇用と非正規雇用の労働者の間に横たわる不合理な待遇差をなくすもので、一見すると契約社員やパート、アルバイトだけに関係するもののように見えるが、企業の中で行われている変革を知ると、正社員として働いている人たちにも大きな影響があることがわかる。

●成果を出さない正社員には逆風

「雇用形態にかかわらず、同じ仕事をしているのなら、報酬も同じであるべき」という主張は公平で、本来そうあるべきだと思う。逆に正社員というだけで高い報酬を得るのは、働き方が多様化している世の中では不公平だ。
ではこの問題を経営者の視点から見るとどうなるだろう?まず大前提として、日本の多くの企業は業績が苦しくて、賃金を上げる余裕などないということだ。同一労働同一賃金制度の導入で、非正規雇用者の報酬を上げるためには、必然的に正社員の給料を下げなければならないが、これも簡単ではない。するとどうなるか?
成果を生み出せない人材は、リストラか退職金を割り増ししてでも早期退職してもらうということにならざるをえないだろう。これは多くの企業にとって痛みを伴う改革だが、今の制度のままでは正社員と非正規の格差が広がるばかりだから、企業のとしては断行しなければならなくなる。

●超実力主義の社会の到来

そして、この改革が実行される数年後には、本当の意味での実力社会が到来している。正規か非正規かではなく、成果に見合った報酬を受け取る時代。これは会社にすがりついて自分の実力を伸ばす努力を怠ってきた社員には地獄だが、モチベーションを高く持ち、興味関心や人脈を広げ、向上心を持つ人々にとっては最高の環境だ。
大事なのは労働時間ではなく生み出した成果。ちなみにこれは外資系では普通に浸透している考えで、遅く出社しようが、早く帰ろうが、ランチタイムを2時間取ろうが、やるべきことをきちんとやって、周りの期待を上回る仕事をしていれば、誰も文句を言ったりはしない。

●10年後に今の会社に所属していると思いますか?

ところで、あなたは10年後も今の会社で働いているだろうか?自分の意志はどうであれ、これからは日系企業でも会社都合のリストラが日常的に起こるようになるだろう。また新型コロナウィルスのような、世の中の常識を瞬く間に変えてしまう出来事により、10年後に今の会社が残っているかどうかなんて誰にもわからない。終身雇用がなくなった今、「会社は依存するものではなく、スキルを身につけるために渡り歩く場所である」というマインドを持っていた方が良い。ましてや真の実力主義で評価され働き方が多用化する時代には、一つの会社に固執して働く意味はなくなる。すなわち、これから必要なことは、どんな場所にいても自分が貢献できる能力を持ち、必要とされる人材になっていることだ。そして貢献度が広がるにつれ、それに比例するように収入も増えていくことになるだろう。

会社員のパラレルキャリアはメリットしかない

●副業ではなく複業をめざそう

一つの会社に人生を賭けることは、リスクが高い時代になった。そのリスクを分散させるためには、働き方も分散させることが理想となる。例えば、本業の他に、複数の他の仕事も持つという働き方はいかがだろう?これは最近では「パラレルキャリア」と呼ばれている。ただし、これは「副業をしよう」ということではない。
副業は副収入を目的とする働き方。本業の休みの日に、近所のお店でアルバイトをし、お金のためだけに働くのは副業だ。これは手っ取り早く収入を増やすというメリットはあるが、自分の時間とお金を交換しているに過ぎない。しかしここで薦めているのは副業ではなく複業なのだ。ポイントは、「自分のキャリアを広げたり、好きなことや得意とすることで世の中に価値を提供できるものを選ぶ」ということだ。
お金が最終目的ではないので、あくまでも好きなことや興味のあること、そしてそれがライフワークにつながるようなものを選ぶ。それが巡り巡って人のためになり、やがてお金という形になって自分に還元されていく。

●お金ではなく、人への価値提供のために働く

働く目的は、お金だけではない。世の中には、経験やスキルを積んだり、人を助けるためのボランティア活動をしたりなど、タダでもいいから働きたいという人はたくさんいる。自分のやりたいことを仕事にするというのはそういうことで、それがきっかけになり人生がプラスの方向に変わり始める。やがて、世の中に提供した価値の大きさに比例して、応援してくれる仲間が増え、収入が後からついてくるようになる。だから最初は副業のようにお金を稼ぐことにこだわる必要はない。そもそも会社によっては副業を認めていないところもある。まずは本当にやりたいことを見つけ、助走をしながら状況に合わせてその後のビジネス展開を考えていくのが良いと思う。会社員として給与はあるのだから、ここで無理してリスクを取ったり、お金を稼いだりする必要はないのだ。

●70歳を過ぎたらどんな仕事をするのか?

日経新聞社が2019年秋に実施した世論調査によると、70歳以上まで働くつもりだと答えた人が60歳代の54%にのぼったということだ。定年が現実味を帯びる層ほど、高齢まで働く意向があるという分析結果だ。人生100年時代と言われている現在の会社員の定年は65歳。残りの人生3分の1の35年間をどのように生きるのかを、あらかじめ考えておくことは、私たちにとって大変重要なことだ。これは定年退職後の普段の生活スタイルのこともあるけれど、お金に不安があればば、いつまでも働き続けるしかない。
ところで、定年後に働くとしても、一体その時どのような仕事があるのだろう?そしてそれは、そもそも自分のやりたい仕事なのだろうか? 今あなたがまだ20代から40代ならば、「数年先も見通せない変化の早い時代に、数十年先の雇用なんて見通せるわけがない」と反論されるかもしれない。確かにそれも一理ある。しかし、自分の未来が想像できなければ、それに向かって準備をすすめていくこともできない。世の中がどんなに変化しようと、自分の目指す方向性は大きく変わらないはずだ。その理想の未来を実現するために、今必要なものは何かを考え続けるから、時代の変化に合わせて自分の行動を調整していくことが可能となる。また、そういう視点を持つことにより、会社員という立場を利用しながら複業を展開することが可能となるわけだ。

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