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コロナバブルは投資のチャンスか?大損しないためのコロナ渦中の資産運用術
日本のオンライン証券会社の口座開設数が、この数ヶ月うなぎ登りで上昇している。背景には、今まで証券業界で開拓が難しいとされていた30代以下、女性、そして投資初心者の層がこぞって投資を始めようとしていることが挙げられる。
この大きな流れには様々な理由があると思うが、なんと言っても新型コロナウィルスの影響で株価が大きく下がったことと、そして全国民へ一律で配られる10万円給付金の存在が大きいのではないだろうか。
日本人の資産運用が「貯蓄から投資」に向かうのは歓迎するが、今が投資を始めるベストなタイミングかと聞かれれば、個人的に答えはNOだ。今は資産を増やすよりも守るフェーズ。増やすより、やがて訪れる金融危機をなんとしてでも乗り切ることが、非常に大切だと考えている。
今回は「なぜ今が守りのフェーズ」なのか、そして「金融危機のために何を準備しておくべきなのか」について解説する。
実体経済からかけ離れすぎている株価
●なぜ株価は上昇中?
世界的に夏までには落ち着くと思われていたコロナ渦の進展は、思ったより良くない状況が続いている。更に昨年株価を乱高下させた原因である米国と中国の関係は、一変悪化して今は最悪だ。
それなのに、世界の株価はどんどん値を戻している。今年2月に史上最高値をつけた世界株は、3月の初めに一度暴落したが、その後急速に値を戻してきた。2020年6月現在で、2019年の10月までの基準に戻っているが、その理由は企業の業績が良くなっているからではない。
コロナ渦で世界中の企業が存続をかけて耐え凌ぐという状況が続く中、会社の業績が良くなるわけがない。それなのに株価は上昇し続けているのだ。
●中央銀行の緩和マネーが金融市場を支える
株価の上昇が企業の業績によるものでなければ、一体何なのか?一番大きな要因は、各国の金融政策が株価の下支えをしていることによる。日銀は直接金融市場で株(ETF)を買い今や日本企業の一番の大株主になってしまった。
他の国も金利を下げたり、発行された社債を買ったりなど、賢明に経済の下支えをしている。それが今の株価を形成しているのだが、これはコントロールされた官製相場というのが、多くの経済人の見立てである。
●個人マネーも金融市場に流れる
日本の場合、コロナにより店を閉めたり失業に追い込まれて大変な人たちがいる一方、テレワークができる人や公務員、そして年金生活者たちは、それほど経済的な被害は受けていない。しかしそれでも一律10万円の給付金だ。このお金が市場に流れて、株価の下支えをしているということもある。
株価が上がっているのを見て、乗り遅れないようにと思って焦って投資をする人もいる。それがまた株価を上昇させる原因になるという上昇のスパイラルが、今の相場を形成している理由の一つである。そういう状況で、経済再開の期待などが膨れ上がると、更に多くの個人マネーが市場に流れるのはある意味必然だ。
増大する株価下落のリスク
●コロナ渦の経済損失はリーマンショックの2倍
今後の経済を見通すためには、新型コロナウィルスの流行を収束させるための経済停止を伴うロックダウンが今後どのくらいの可能性で発生するのか、そしていつになったら収束するのかということを予測する必要があるが、これには専門家でも意見が分かれており、実際は未来になってみないとわからない。しかし、大半の専門家の見方は、「コロナは長期化する」という認識で一致している。
また、感染地域は世界に広がっているので、ある地域で感染が収束したとしても、他の地域からのウイルスの侵入で、感染が再燃する可能性は高い。そうなれば、再度ロックダウンということになり、経済活動は再びストップすることになる。
5月に発表されたアジア開発銀行の試算によると、コロナによる世界経済の損失は最大約960兆円。最大とは言うものの、これは2008年のサブプライムローンからリーマンショックが起こった時の経済損失額(470兆円)の2倍だ。あの時の株価の暴落は今でも伝説だが、その2倍のインパクトとなれば、このまま株価が影響を受けないわけがない。
(参考:世界経済、最大940兆円損失 アジア開銀試算)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59136760V10C20A5EAF000/
●中国を取り巻く国際紛争リスク
アメリカと中国の関係も緊張状態が続いている。昨年一度はお互いに歩み寄りを見せたかと思うところまで行ったが、コロナ渦で状況が一変した。トランプ大統領は、今年11月に行われる大統領選挙に再選を果たすため、アメリカでのコロナの被害を中国になすりつけたが、中国は当然反発。更にアメリカは香港問題で香港寄りの姿勢を見せているので、これにも中国は反発している。
最近では、ジョージフロイド氏の死亡事件による行き過ぎた大規模デモの先導の裏に、中国の陰があるとニュースになっている。再選を目指すトランプ大統領とそれを阻止したい中国。世界経済をリードするこの二つの大国の関係が、政治的要因により最悪だということは認識しておきたい。どちらがこけても世界経済は大変な影響を受けるがが、今の中国の国際社会のプレゼンスを見れば、このままにらみ合いの状況が続くことにはならないと思う。
●日銀は負債と債務超過に耐えられるのか?
視点を世界から日本に移そう。
日銀の本来の役割は、紙幣の発行と金融政策を通して金利を調整することだが、今の日銀は市場のモンスターと言われている。これは日銀が直接株式市場で株やETFを買いまくっているからだ。そして今や日銀が日本企業の大株主になってしまった。株価が下がれば日銀が保有する資産額が減ってしまい、それでは都合が悪いので、日銀が買い増しをして株価を支える。本来日銀にはそんな役割はないのに、この禁じ手を長期間行ってしまい、もう後戻りはできないレベルまできてしまっている。仮に最大株主の日銀が株を手放すなんてことを発表したら、市場は一瞬で大混乱に陥ってしまうのだ。
しかし、日銀にも限界がある。我が国の中央銀行だからといって、いつまでも潤沢な資金を市場に注入できるわけがない。日銀がこれ以上株を買えなくなったとき、日本株の暴落が始まる。
●忍び寄る増税
コロナによる休業補償や雇用助成金、そして一律10万円のバラマキ。これは当たり前だが天から降ってくるお金ではない。10万円をタダでもらったと喜んでいる人がいるが、これは将来増税という形で自分たちに返ってくるものだ。税金を前借りしただけなのに、なぜそんなに喜べるのかと不思議でならないが、本人にその意識はない。なぜなら、これらの給付や保障が後にくる増税とセットで語られる事がないからだ。
一律10万円は、日本に住民票があれば、コロナによる経済的被害を受けていない年金生活者にも配られる。しかしそれを増税で穴埋めするのは、現役で働く世代と今の子どもたちだ。
GDP費の2倍以上の世界ダントツトップの比率で債務を抱える日本で、毎年増え続ける国家予算に上乗せされたコロナの補正予算額は、今年は40兆円くらいになる見通しだ。もはや普通に返済することは不可能。ハイパーインフレで借金を帳消しにするしか手段は残されていないというのが俺の考えだ。
ちなみに、円のハイパーインフレとは、円の通貨としての価値がなくなることで、すなわち円の暴落(1ドル100万円とかそれ以上)のような世界だ。
今個人がとるべき資産防衛の手段
●オンライン証券会社の口座を開設
経済の実態にそぐわない株価と、株や円が暴落する数々のリスク。通常時は世界株に積み立て投資をするのが良いと思っているが、今は非常時。非常時には資産を増やすのではなく守ることに集中するべきだ。
まず、証券会社に口座を持っていない人は今すぐ開設しよう。オンライン証券会社ならネットで全部手続きができる。生活に困窮していないのなら、前借りした給付金も、いずれのしかかる大増税に向けて投資に回そう。ただし、株式への投資はまだ早い。上記に挙げたいずれかの理由で、株価が暴落したときにすぐ買える準備をしておきながら、次に述べるドルの購入をしておくのだ。
●米ドルを持っておく
日本の財政問題がいつ起こるのかはわからない。世界でダントツの負債を抱えている日本が、あとどのくらいの余裕があるのか?ひょっとしたらコロナ渦が収束する前に、日銀の債務超過問題が起こり、そこからハイパーインフレになる可能性もあるのではないだろうか。
資産防衛のためには、分散は基本だ。でも今は高値をつけている株式ではなく、通貨の分散が有効だ。ドルやユーロ、豪ドルなど、選択肢はたくさんあるが、一番安全なのは基軸通貨のドルだろう。
証券会社の口座を開けば、そこでドルやドル建てのMMFを買うことができる。どちらもリスクはほぼ同じだが、それぞれ課税方法が違うので、自分に合った方を買っておくのが良い。
ご参考:外貨建てMMFと外貨預金の違い(楽天証券)
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/find/foreign_mmf/difference.html
●暗号資産(仮想通貨)という選択肢
暗号資産は問題も多いし値動きも激しく、万人にお勧めできるものではないが、それでも資産防衛の観点からは分散先の候補としては有効だと考える。
仮想通貨の取引所には「毎日つみたて」というサービスを提供しているところがあり、毎日定額でビットコインを購入できる。値動きが激しいので、俺は毎日約330円(1ヶ月1万円)ずつこれに投資をしている。いざというときに海外にお金を持ち出す手段としてのリスクヘッジだ。
まとめ
コロナ渦によって大打撃を受けている経済の中、株価だけが不自然な上昇中。自分だけ取り残されないように、今この相場に乗りたい気持ちはわかるが、今は攻めではなく守る時だ。
大きなリスクは株価調整と円暴落。どのシナリオでも対応できるように、オンライン証券に口座を開設し、資産の一部をドルに換えておくことが、今後の自分を守ることにつながる。
資産形成とは、攻めと守りの両方の視点が必要だ。平時は攻めて有事は守るのが基本。世界が激変しているコロナ渦の今は、間違いなく有事だ。今個人でできることはしっかりと準備をし、いずれやってくる株価暴落やハイパーインフレで資産を減らすことのないよう備えておくことが、自分や家族や愛する人を守ることにつながるのだ。